片想いの行方
第51章 制裁
「ヒメくん」
2.3歩進んだところで、後ろから呼ばれて振り返る。
「……気を付けてね。
何かあったら、すぐに電話して?」
「大丈夫。 俺1人じゃないから」
その言葉に奈々さんは微笑んだ後、ゆっくりと表情を戻した。
「……美和ちゃんのこと、優しく迎えてあげてね」
「…!」
「……もっと早く助けを求めれば良かったとか、こうしたら早く解放されてたのにとか
周りは何とでも言えるけど。
当の本人は、そんなことも出来ないくらい追い詰められて、暗い世界に閉じ込められてたんだわ。
だから
美和ちゃんが責められる理由は、何一つとして無いのよ」
途中から声が震えて、大きな目いっぱいに涙が溢れている。
………美和、良かったな。
お前には、こんなにも想ってくれる心の優しい先輩がいる。
頬に伝わる奈々さんの涙を
俺はそっと右手で拭った。
「……分かってる。
悪いのは全て一条だ」
美和が「助けて」といったあの日から
1ヶ月近く経ってしまったことが悔やまれるけど
ようやくあいつの笑顔が見られる。
「………あの男だけは、絶対に許さない。
これ以上好き勝手させてたまるか」
俺はそう呟くと、早足であのマンションへと向かった。