片想いの行方
第51章 制裁
▽Side... 美和
「どうぞ」
夜の9時20分。
時間通り、ガラスのダイニングテーブルの上に最後の料理を置く。
ワインを飲んで夜景を見ていた一条さんが
松葉杖をつきながら、こちらに戻って来た。
そして、無言のまま箸を取る。
「………………」
私は入れ替わるようにその場から離れて、テーブルの後ろにあるソファに座った。
いつも通り。
一条さんが食べ終わるまで、何も言わずに此処で待つ。
片付けたお皿を食洗機に入れて
朝届けたお弁当箱をランチバッグにしまったら
1日の儀式が終わる。
……もう、2年も同じ事を繰り返してきた月日の中では
“ 日常 ” と化していたから
何も期待してなかったし
何も感じていなかった。
だけど
ヒメに助けを求めたあの日から
私の心は、大きく揺れ動いていた。