片想いの行方
第55章 変わらない“2人”
「……待ち合わせに遅れたのはヒメの方じゃない」
「………!」
私の低い声に、ヒメが反応する。
「……お前、いつまででも待つって言ったじゃねーか」
「言ったわよ!
一条さんの事もあったし、私が時間厳守なんて言えるわけないでしょ。
でもヒメが遅刻しなければ、蓮くんに逢わなかった!」
「はいはい、遅刻したのは悪かったよ。
でも俺は何度も電話したんだ。
出なかったのはお前だろ」
「だって気付かなかったんだもん!」
大勢の人が行き交う歩道の真ん中で、ヒートアップする私。
も~~なんだか無償にイライラする!
この低レベルな言い合い。
お互いのあげ足取ってどうするのよ。
とても27歳同士の、大人の会話とは思えない。
でも正直、このイライラは、ヒメが待ち合わせに遅刻したからじゃない。
その理由は………
「………代わりがいくらでもいるですって?」
私はもう1歩前に足を踏み出して、ヒメに詰め寄る。
「そりゃそうよね!
そんな顔してスタイルも良くて、服のセンスもいいし。
おまけに歌まで上手いんだから」
「………よく分かってんじゃん」
「でも感じ悪い!口悪い!
しかもイジワル!
どうせ女侍らせてニヤニヤしてるんでしょ!」
「おい、後半が余計だ!
仕方ねーだろ、事実モテるんだから。
俺とこうして会話できるだけでも有難いと思えよ」
むっか~~~!
なにその言い方!!
自意識過剰……と言い切れないのが悔しいけど、なんで飛躍してこんな話になってるのよ!
論点を戻すべく、私はヒメの服を掴んだ。
「だから!」
私が今言いたいことは……
「ヒメに何人の女がいるか知らないけど!
今日は私だけを見てよ!」