片想いの行方
第56章 恋する姫君
毎年12月24日と25日、このBARではクリスマスライブが開催される。
今年は土日ってこともあり、両日とも予約席は数か月前に売り切れていた。
明日の夜のリハーサルは夕方で終了したから、別に2人への礼は今夜で良かったんだけど。
「クリスマスイヴの夜に、三十路女2人で深酒って。
終わってるな」
俺が呟いたささやかな攻撃に、2人は同時に睨んでくる。
「うるさいわボケ。
あんた人の事言える立場じゃないでしょー」
「姫宮くん、周り見てみなさいよ。
私達と同じ部類がいっぱいいるでしょ。
下手な事ほざくとファン減るわよ」
「……………」
……酒豪だし口悪いし言葉冷てぇし。
だからどっちも独身のままなんだよ。
美和を見習えっつーんだアホ。
……と口にしたら間違いなくぶっ飛ばされるから、黙ってバンドの方を見つめていると
「ヒメ、これ。
コート預かった時にポケットから落ちたんだけど」
ふいに後ろからヤスが近付いてきて、テーブルの上にそれを置いた。
…………げっ!!
「なになにー? この小さな箱……
あ!プレゼント!?」
「……このブランドのロゴ……」
手を伸ばしたけど時既に遅し。
姉貴と優香が同じ顔をして俺を見る。
「やだ~♡
クリスマスに興味ないふりしてるくせに、ちゃんと準備してたんじゃな~い」
「明日のライブにあの子と友達呼んでるんでしょ?
終わったら呼び出して渡すってわけ?」
「なんて言って渡すのよ!
メリークリスマス美和。俺からの10年分の気持ちだ……とか!?」
「10年分にしたら小さいわね。
まぁでも、肝心なのは真剣な想い。
男ならストレートに愛の言葉を言いなさいよ」
……………
誰かこの酔っ払い共を黙らせてくれ………