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片想いの行方

第56章 恋する姫君


…………本当は昨日のうちに渡すはずだった。





美和の “ 私だけを見て ” 発言という不意打ちをくらった俺は




蓮が気になりつつも、結局美和の言う通り、サラリーマンだらけの居酒屋に入った。




美和は酒に強くはないけど、酔っ払うとすげー喋るし、何よりもよく笑うから。




……その笑顔に即ノックアウトされた俺。




すぐにでも持ち帰って、美和をこの手に入れたかった。




だけど





……………………………………………………




『美和、もう店出るぞ。ほら、ちゃんと立てよ』


『ヒメ、ここ美味しかったね。
最後に食べたやつ……ぼんぼり?』


『……“ぼんじり”だろ。
そんなフラつくまで飲むなって。
帰れないなら俺のとこに連れてくぞ』


『ねぇヒメ、楽しかった?』


『は?』


『私、ちゃんとヒメにお礼できた?』


『………楽しかったよ。
礼はもういいから、今後は俺に気を遣うな。
今まであのハゲに散々してきたんだから、もういいんだよ』




店の外に出て、ふらつく腕を持って支えてやると


酒で顔を赤らめた美和が、俺をじっと見る。




『今日も明日も、時間を気にしなくていいんだよね?』


『……ああ』


『これからも夜飲みに行くとして、もし待ち合わせに遅れちゃったら、ヒメ許してくれる?』


『いいよ。俺は心が広いから』




俺の言葉を聞いて、美和は微笑んだ。




『……幸せすぎて、どうしよう』



『……………』



『ありがとう、ヒメ。


また私の前に現れて

大切な人達と一緒に、あっという間に助け出してくれて



私のヒーローだよ』

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