片想いの行方
第56章 恋する姫君
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「………………」
「何顔赤くしてんのよ。
もう酔っ払ったの? ダサ~」
姉貴の言葉も、耳を通り抜ける。
………ヒーローとか……言うんじゃねーよ。
どれだけ俺の心臓を突き破れば気が済むんだ。
結局俺はその日、明日25日のライブのチケットだけを渡して
丁寧なことに駅のホームまで付いていき、終電に乗る美和を見送った。
持ち帰れなかったのは
大事すぎて、手も繋げなかったから。
………………
………俺って…………
「今まで色んな女と付き合いながらも
結局、ずっとあの子の事が好きだったのね」
プレゼントの箱を黙って見つめる俺に、優香が口を開いた。
その言葉を無視すると、タバコに火をつけた姉貴が続ける。
「ほんとバカよねー。
誰と付き合っても長続きしないんだから、回り道せず美和ちゃんだけを追いかけてればよかったのよ。
いつの女だっけ、あの受付嬢の女。
あれは無かったわ~」
「続かないのはてめーのせいだろ!」
既に空になったボトルを見てから、姉貴を睨む。
「毎回必要以上に干渉しやがるから、女がびびって離れてくんだよ。
いいかげんブラコン卒業しろ」
「あらっ!勘違いしないでほしいわー。
私はただ、美和ちゃんに妹になってほしいってだけよ♡」