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片想いの行方

第56章 恋する姫君




演奏の曲調が変わった。




さっきまで賑やかだった店内に静けさが戻り、バラードに包まれ、その音色が響き渡る。




暫くの間、窓の外の東京タワーを眺めていた優香が、ゆっくりと口を開いた。




「いつまでもチャラ男演じてないで。

モタモタせずさっさと告白しなさいよ」




………できるならとっくにそうしてる。


だけど




「そうしたいけどうまくいかねーんだよ。

……お前の元彼が、相変わらずおいしい所ばかりもっていきやがるから」



「…………蓮が?」




優香が続けて何か言う前に、姉貴がケラケラと笑い出す。




「へぇ~ いまだにあんた蓮くんにトラウマ抱えてるの?
ウケるわ~」




今日の外国人のボーカルが、切ないメロディーにのせて聴かせてるっていうのに


この女にはムードもへったくれもないようだ。




「…………」




社会人になってからも、大学関係の集まりで何度かその顔は見ていたけど



昨日、蓮に会ったのは数年ぶりだった。




一条の命綱である父親が商社関係者だと奈々さんに聞いてから、瞬時に蓮が使えると思ったけど




直接繋がりがあり、結果一条追放までこぎつけるとは、さすがの俺も予想できなかったわけで。




蓮の制裁は、一条に逆ギレや復讐までもさせない、徹底的なトドメになった。





……任務を遂行し、感謝はしてる。







だけど






昨日のクリスマスツリーの前で、美和を見つめる蓮の目を見て





俺は確信した。


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