片想いの行方
第68章 ☆蓮愛相談室
▼Side... 蓮
枕元にあった携帯が鳴って、画面を見ないまま電話に出ると
その声は唐突に俺の耳を貫いた。
『蓮!今何してる!?』
「……………」
『隠さず答えろ!』
つい1ヶ月程前、1人の女を巡って壮大なドラマを繰り広げたというのに
それを微塵も感じさせやしない、主語のない言葉。
「……ヒメ……今何時だと思ってんだ。
朝っぱらから大声出すんじゃねーよ」
『はぁ? 傷心のあまりついにボケたか』
「………こっちは早朝6時なんだよ」
体を起こして、隣りで眠る瑠璃の目を覚まさないように
俺は携帯を耳にあてたまま、そっとベッドから出た。
上着を着て、ホテルのバルコニーに出ると
バンクーバーの海の向こう側に見える山間から、朝日が昇るところだった。
「何してるかって質問に素直に答えると。
たった今、お前の罵声で起こされた所だ」
俺がそう答えると
電話の向こうで、安堵のため息が聞こえた気がした。