片想いの行方
第69章 ☆甘い夜
「いただきます」
ヒメはフォークを持ちながら、両手を顔の前で合わせた。
前菜の盛り合わせ
トマト煮込み
鳥肉と茸のグリル
スモークサーモンのクリームパスタ
自分でもちょっと作りすぎたかなって思うけど
私が取り分けると、ヒメはそれを黙々と口に運ぶ。
「美和」
「なに?」
「すげー美味しい」
「良かった///」
「見てるだけでも感動する。
食べんの、もったいねー」
「………大袈裟だよ」
会社が休みの土日とかに、たまにこうしてヒメの家で料理を作る。
一条さんの件があってから、ヒメは私に作らなくていいって言うんだけど
『いただきます』
『美味しい』
『ごちそうさま』
普段甘い言葉を言わないヒメが、私が作る食事の時は、必ずそう言ってくれるから
当たり前のことなのかもしれないけど
泣きたくなるくらい、嬉しいんだ。
「ヒメ、いいよ残して」
「なんで。全部食うよ」
「……お腹壊すよ?」
「あっ、お前その最後の肉は俺のだろ」
私が自分のお皿に乗せた鳥のグリルを、ヒメは自分のフォークでさした。