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pure love

第10章 願い

芳ばしい匂いに、熱々を報せるように昇る煙。

誘われるように俺の腹が鳴る。


紘平と取り合うように肉を頬張り、

雅也が握ったという巨大おにぎりを詰め込む。

奏が後ろを見ている隙に、紙コップの中味をウーロン茶からコーラへと変えて置く。

凛の友達の小夜子たちが剥いてくれたフルーツを食って、

酔っ払って陽気になった奏の父親と、肩を組んでよく知らない昔の歌を合唱する。

筋肉自慢の紘平の父親が肉体美を披露し始めて、キャーキャー言いながら目を覆う女子を尻目に、おだてまくってパンイチにまでさせた。


─────ああ、すげー楽しい…

生きてきた中で、間違いなく一番楽しい夏休みだ。



「蓮、大丈夫か?」

真面目な顔をした凌太先生が隣に座る。


「相変わらず眠い。けど、大丈夫だよ」

俺の言葉に、凌太先生はそっか…と安心したように呟いた。


「悪いな、俺、病院に戻らなきゃならなくなった」

凌太先生の言葉に不安が過る。

凌太先生が居れば大丈夫って、心ん中で安心してたのに…

でも、凌太先生は院長で医者なんだから、俺1人に付き合ってられる訳ないよな。


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