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pure love

第2章 嫉妬?

「むっ…昔ね、星を掴もうとして、タモを持って家の屋根に上がったの」

恥ずかしそうに俯いたまま、凛が話し出す。


「届きそうで届かなくて……必死になってタモを振って……」

「屋根から転げ落ちた?」

「っ! なんでわかったの?」


驚く凛に、堪え切れずに吹き出す。

「ドジな凛がやりそうな事だから」

俺の言葉に、凛はプーッと頬を膨らます。

その仕草さえもまた、俺の笑いを誘った。


もーっと言いながら更に膨れる凛。

必死に笑いを咬み殺すけど、小さな声が漏れてしまう。

「ククッ…てか、屋根から落ちてよく無事だったな?」

「”絶対落ちて来ると思った”って、下でお父さんが待ち構えててくれて、抱き止めてくれたの」

「さすが父親! 凛のドジには慣れてんだな」


そんな風にからかいながらも、少しだけ凛が羨ましい。

何度も生死の境を彷徨った俺のせいで、俺の親は他の親よりも心配症だ。

俺が屋根に登ったら下で見守るなんてせず、有無を言わさず引き摺り下ろすだろう。

親子で何処かに行った事もないし、遊んでもらった記憶もない。


思い出すのは、病院で泣いてばかりいた母親の姿ばかりだ……。

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