神様の独り言
第12章 神様は迷羊に救われる
「やっぱり……殺しておけばよかったわ…酒井さん…」
酒井は、視点の合わない…呆けた道子が…ハキに見えていた…
泉も―――――…ずーっと道子だと思い尽くしてきた!!
そう―――――――…
泉は、大樹を使い…
長い間…マンションの使用人全員に暗示を地道にかけていた――――――――…
もちろん…酒井も例外なく…暗示の対象になっていた…
使用人と話すときだけ補聴器を使う酒井に…
大樹の声の力や独自の暗示技術を使い…使用人室や買い出しのわずかな合間に…細かい暗示をかけ続けた…何年も…何年も――――…
気づかれないように…
この日のためだけに……
容姿入れ換えの暗示をかけられていたのだった…
だから…事件後…
使用人全てが、泉を道子と…
道子をハキと―――――…
思い込み生活していたのだ…
「―――――大樹の力は…結構、役にたったわ…時間のかかる暗示だったけど…
見事にあの日から…私を道子と間違えてくれましたから…」
泉は、笑いながら……ジリジリと…酒井に詰め寄る…
「しかし…酒井さんも、暗示にかかってたのに……
道子に解かれたって―――…
この子…今では私の操り人形よ?何をしたの?」
「――――――裕太様は…“竹の子の里”を分割して食べません…
分割して…チョコの部分だけ食べるのは――――――…道子様だけですから…
お菓子の食べ残しで…気がつきました…」