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12cm~越えられない距離~

第11章 魅きつける力

「…え?」

予想外の言葉に、返す言葉が見つからない。

「これ、買ったときの事、覚えてる?」

アキが鞄を持ち上げると、ネームプレートが揺れた。

「あ…勿論」

「これ彫ってる時、すごい真剣な目してて…出来上がって私が感想言ったら、いい笑顔してた」

え…?俺、あの時どんな顔してたっけ!?

全然覚えがなくて、気恥ずかしくなる。

「次の日学校で会ったときも、鞄に付けてたら凄く喜んでて…。それって、自分の作ったものに自信があるからでしょ?」

「まぁ…買ってもらう訳だし…お金を貰うからには、変なものは渡せないって思ってるから」

そこだけは譲れない…って言うか、ポリシーみたいに考えてる部分だし。

「そういうの、いいなって思った」

ポツリと呟かれたアキの言葉に、どきりとする。

「だから…好きなのに、描けば描くほどそうじゃなくなるのって、辛いだろうな…って思う」

「うん…」

自分では意識してなかった所に、アキの言葉が染み込んでいく。

アキは、俺を見ててくれたんだな…。

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