テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第11章 魅きつける力

「だけど、要先輩が度胆抜かれたって。あれを自分の技に出来たらすごい戦力になるって言い始めて…」

うん。確かにそうだろうな。

「それから、毎日フェイクの練習ばっかりしてる…けど、やればやるほど動きは固くなるし、上手くいかないし、どうしたらいいのか全然分かんないのに、皆はアキなら出来るって言ってくるし」

座ったまま腕と足を伸ばすと、はあっと大きく息を吐いて

「どうしたもんかなぁ…」

と呟いた。

俺の悩みよりアキの方が深刻そうに思うんだけど…。

さっきのアキの言葉を借りれば、

『バスケが好きなのに、練習すればするほどそうじゃなくなってツラい』

今がその状態な訳で。

どうしたらその状態から抜け出せるんだろう?

「アキはさ、フェイク出来るようになりたくて練習してるんだ…よな!?」

「うん…一応、ね」

「やらされてる訳じゃなくて」

「…まぁ、ね」

奥歯に物が挟まったような言い方になるのは、やっぱりどこか納得しきれてないからなのかな。

それなら。

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