テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第14章 傷ついたのは…

放課後。

美術室に行くと、部員の殆どがイーゼルを前に座っていた。

うわ。皆真面目に頑張ってるな。

夏休み前にある程度仕上げたいんだろうか。

色付け作業に入ってる人も、ちらほらいたりして…。

俺は、自分の荷物の中から砥石を取り出すと、彫刻刀を持って流し台に向かった。

今現在、コンクールに出す絵の構図すら、何も浮かんでない。

『希望』ねぇ…。俺にとっての希望って何だろう?

焦っても仕方ない。

だったら集中出来ることをしていようと、彫刻刀を研ぎ始めた。

シャッ、シャッと研ぐ音がする。

新しく円柱の砥石を買ってみたけど、馴れるまで角度が難しいな…。

丸はいいけど、小丸は平石の方がやり易い。

刃先に集中していると、突然背後から怒鳴られた。

「いい加減にして!!」

振り向かなくてもわかる。近藤だ。

「コンクールに出す作品、まだ取りかかってもないのに何してるのよ!!」

「研いでる」

作業を止めない俺に苛立っているんだろう。

「彫刻は禁止だって言ったじゃない!!」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ