テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第2章 意外と…

商品の陳列が終わって一息ついてるとお客さんが入ってきた。

接客係は母親に任せて、俺はもっぱらレジと加工係をしていく。

まぁ、俺が店の手伝いを楽しんでる理由はそれで。

「繚平、名前入れてあげて」

「はい、ありがとうございます!!」

母親が連れてきたお客さんに笑顔を向けて、俺はサンプル一覧を見せる。

「えーと、どんな感じにします?」

ネームプレートに名前を彫るサービスをやり始めて、パターンが増えるに従って注文も増えてきた。

電動彫刻刀を使ってその場で彫って、カラーペンで色付けする。

「はい、出来ました」

「ありがとうございます。すごーい。かわいぃ♡」

自分の作ったもので人を笑顔に出来た時って、すっごい充実感を得られる。

これが欲しくて、手伝いしてるようなもんだから、孝行息子なんてもんじゃないんだ、俺は。

会計してお客さん見送って。

すると母親が上機嫌で

「繚平、あんたスキルアップしたわね~」

「何だよ、急に」

「息子の成長を間近に感じられてお母さんは嬉しいわ」

「…よく言う」

家で部活用の彫刻してた時は、床が汚れるだの音がうるさいだの文句言ってたくせに。

「そうそう。彫るの終わったなら、このネックレスに値札つけといて」

そう言って作業台に宅配便で届いた商品を置いて、さっさと店内に戻っていった。

「…はーい」

ため息混じりに返事して、俺は次の作業に取りかかった。

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