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12cm~越えられない距離~

第15章 夏休みの始まり

肉屋の手伝いが終わって、店に戻る。

当たり前だけど、二人の姿はなくて。

ハハオヤが俺を見て、ニヤニヤ笑っていやがる。

「あ、二人なら帰ったよ。残念?」

「別に!!」

その口調に少し苛立ち、つい強く言い返してしまう。

ハハオヤは笑いを浮かべたままだ。

…くそ。面白くない。

「繚平、あんた3日って用事ある?」

「何で?」

「ちょっと頼みたい事があるんだけど」

「…何?」

「須方のおばあちゃん家に届けて欲しい物があるのよ」

須方ってのは地名で、そこにはハハオヤの実家がある。

ここからバスで30分ぐらいの場所。

「3日じゃなきゃ駄目なのか?」

「その日土曜でしょ?一期くんが彼女と来るんだって」

へぇ。一期、彼女いるんだ。

高橋一期。俺のいとこ。

喫茶店で働いてて、休みがないっていっつも忙しそうにしてる奴。

「結婚するみたいよ」

「うっそ!!マジで!?」

「会ったらお祝いしてあげなよ」

「ん。わかった」

ハハオヤの策略にまんまと乗せられたと気付かず、須方に行くことになってしまった。

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