テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第2章 意外と…

「そのキーホルダー、柿渋で染めてるから。彫りで木目生かすならこっちとこれがおすすめだよ」

俺がサンプル表から書体を2つ選んでみせると、んー、と暫く悩んだ末に

「じゃあ、こっちで」

「わかりました。ちょっとお待ちください」

そう言って、道具を準備する。

「彫る名前は何にする?フルネーム?それとも名前だけ?」

「名前だけでいいけど…」

何か言いたそう。そわそわしてる。

「要望あれば聞くよ?」

椅子に座って見上げると、根本さんが口元をきゅっとつぼめた。

「名前、裏に彫ってくれない?」

「…裏?」

意味が分からず、根本さんを見返す。

「だって…表に彫るって事は、この辺の…お腹の辺りに彫るんでしょ?」

根本さんが選んだキーホルダーは、ディフォルメした黒ウサギが人参をくわえてるデザインで…チェーンが人参の上についてる。

スペースの関係上、ウサギの胴体部分に彫りこむ事にはなるけど…

「まさか…可哀想、とか?」

俺の問いかけに、根本さんは慌てて

「ちが…っ!!せっかく可愛いから、どうせなら別の場所にしたいの。それだけ!!」

そんなむきにならなくても。顔、ちょっと赤くなってるし。

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