テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第2章 意外と…

「了解。…でも、裏は柿渋一回しか塗ってないから、彫りだけじゃ名前目立たないかも」

「え?じゃ、無理!?」

「ま、やってみて色入れるか考えようか」

俺が電動彫刻刀を構えると、根本さんが感心したように

「中谷くん…素材も全部覚えてるの?」

「何が?」

「見ただけで何が塗ってあるかとか分かるんでしょ?」

「あぁ…これは俺が作ったやつだから」

彫刻刀で名前を彫っていきながら答える。

「マジで!?…あ、ごめん」

口を覆って俺の手元を見てる。

「早い…。すごい。職人みたいだね」

「ありがとう。…やっぱあんまり映えないなぁ…」

ただ名前だけだからつまらない仕上がりになってる。

「彩飾するか…何か模様彫ろうか?」

「ん~、色はいいや。このままの方が味がある、かな?」

根本さんは出来上がった品を満足げに見つめてる。

「じゃ、模様彫ろうか?」

「あんまり派手にならない程度にね?」

サンプル見ながらいちいち反応してる根本さんが面白くて、頬が緩む。

意外と…可愛いとこ、あるな。


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