テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第19章 俺の、だ

「ごめん、待たせた」

そう言って近付くと、アキがホッとしたように笑顔を向けた。

「あ、繚」

「ん?どうかした?」

落ち着かないような素振りをしていたのが気になって聞くと

「普段、こんな格好しないから…慣れない」

その口調に、つい笑ってしまう。

「笑わなくてもいいでしょ!?」

「ごめん」

少し顔を赤くして、照れ隠しみたいに唇を尖らせてる。

よかった。やっぱりアキだ。

俺の知ってるアキだ。

「すげぇ似合ってる」

「……え…?」

「慣れなくても、似合ってるから」

アキが驚いた顔で、じっと俺を見てる。

え?俺、また何か変なこと言ったか?

その視線に耐えられず、俺は自分の買ったものを掲げて

「俺、お好み焼き!!アキは何にしたんだ!?」

「あ…えと、チヂミ」

「…またマニアックな…」

俺の率直な感想に、アキはムッとしたように

「なっ!!何でよっ!?お好み焼きなんていつでも買えるじゃない!!」

「屋台メニューの定番だろ?定番ものは外せないだろ」

「定番なんてつまんないよ!!こんな時じゃなきゃ食べられないものを食べたいんだもん!!」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ