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12cm~越えられない距離~

第20章 花火よりも、もっと

巌本の看板が見えてきた。

すると、アキが

「ごめん…もう少しだけ、ゆっくり歩いてくれない?」

「あ…浴衣、歩きにくいか?ごめんな」

なるべく歩調を合わせて、ゆっくり歩いていく。

辺りは段々と暗さを増してきて、行き交う人の顔がやっと判別出来るくらいだ。

辺りが暗いと、普段聞けない事でも口にしやすくて…。

「アキ、真央って好きなヤツいるのか?」

「え…?」

戸惑ったように声を洩らした。

顔を見れば、驚いたように俺を見ていて…

「いるよな」

確信を持って聞くと、アキは迷いながらも頷いた。

あ、やっぱりな。

だからノブちゃんが何しても気付かないのか。

「望み薄かなぁ?」

ため息混じりに聞くと、アキは悲しげに眉を下げた。

「…多分」

「そっか…」

ノブちゃんにどう伝えようかな。

言っておいた方がいい…よな?

「ノブちゃんが…」

「ん?」

考え事してたから、アキが言った事が聞き取れなかった。

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