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12cm~越えられない距離~

第24章 俺の希望

《沢尻side》

水を入れ替えて戻ってきた繚平が、迷いなく書き込んでいく様子を見て、舌を巻いた。

すげぇな。

下書きなしで、何であんなに描いていけるんだろう。

…何だ。心配無用だったか。

繚平の様子に安心したものの…

同時に、嫉妬してる自分もいる。

同じテーマの絵なのに、捉え方が全然違う。

俺の絵は…平凡だよな。

『希望』だから明るい絵。

訴えかけるものも、考えさせるものもない、分かりやすい安直な…そんな絵。

ふうっと息をついて、自分の作品を見る。

だけど。

俺はこれがいいと思って描いたんだ。

繚平がどんなものを描こうが、関係ない!!

自分の絵と向き合って、仕上げに集中した。


12時になり、昼御飯を食べようと席を立つ。

「おい、ヘンジン見てみろよ」

部員同士の会話が聞こえ、つられて繚平を見ると、絵の下半分を描いている所で…

黒ずんだ緑色の…ヘドロ?何描いてるんだ!?

「テーマわかってんのか?」

揶揄するような口調にカチンとする。

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