テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第24章 俺の希望

《沢尻side》

「表現は人それぞれだろ?」

思わず口をはさむと、そいつは

「まぁ、まともに描くとは思ってないけどな」

口元を曲げて笑い、部室を出ていった。

この前の怪我の一件で、繚平をよく思わない部員が増えた気がする。

彫刻ばっかりやってて、元々調和を乱してると思われてたからな。

だからこそ、「ヘンジン」なんて呼ばれかたをされる訳だし。

だけど、だからって否定しなくてもいいだろ?

繚平に近寄ると

「おい、昼だぞ。飯食おうぜ」

「いらない」

「は!?」

「腹が減ったら食う」

手を休めることなく、目線も絵に向けたまま答えた。

あ…そう。

集中切らせたくないのか?

黙々と絵を描いていく繚平。

半ば呆れつつも、やっぱり何処かで羨ましく思う。

あれぐらい集中して、描きたいと思う題材に出会いたかったな。

ま、仕方ないか。

軽く首を振って、弁当を手に部室を出ていった。

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