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12cm~越えられない距離~

第24章 俺の希望

「出来た…」

大きく息を吐き、椅子に背中を凭れかけた。

両手を伸ばし、ぐんと伸びをすると、自然にあくびが出る。

疲れた…。

あくびで出た涙を拭うと、もう一度自分が描いた絵を見る。

…うん。いい感じじゃないか?

イメージ通りに描けた。

黒ずんだ緑色の群衆。

その中心に、白い服を着た女の子。

左腕の袖と、スカートの一部は群衆に掴まれて破けていて、肌から血が滲んでいる。

顔も腕も足も、所々泥にまみれて汚れていて…

でも、光が降り注ぐ天上に右手を伸ばし、前を見つめる目は、希望に満ちている。

だからこそ、左手で押さえられた胸から、天上と同じ光が溢れてる。

希望の光。

群衆からの妬みに負けない、強い意思と心。

そういったものを表したかった。

それが、俺の思うアキの強さだから…。

「繚平、出来たのか!?」

沢尻が声をかけてきた。

「ん…終わった。お前は?」

「俺は仕上げだけだからな」

そう言って見せてくれた絵は、温かいタッチと色使いの抽象画だった。

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