テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第27章 手芸部

「何もないって…得意なことがないって事?」

俺の問いに、

「秀でてる部分がないんです」

皆美ちゃんはそう言うと、ロッカーからいくつかの作品を持ってきた。

編みぐるみの熊とうさぎ。

レース編みのコースター。

ビーズで出来たイヤリングとネックレス。

どれも良く出来ていて、自信をなくすような作りではないのに…。

でも、それを見たノブちゃんは

「あぁ…成る程」

と呟いた。

「え?」

「これ、教えてもらって作ったの?」

「はい。そうです」

「ふぅん。慣れもあるだろうけど…」

編みぐるみの熊を手にとって、回しながら言葉を選ぶノブちゃんに

「…やっぱり、榊原先輩には分かりますか?」

「ん…。言いたいことは分かるかな」

二人の間で通じている事がさっぱり理解できなくて、二人の顔を交互に見ていると

「ちょっと待って。残ってるかな…あ、あった」

ノブちゃんが携帯電話を取り出すと、画像を見せてくれた。

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