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12cm~越えられない距離~

第30章 12cmの距離

「お疲れ、お疲れ~」

前田先生がにやにや笑いながら俺を見た。

「相変わらず性格悪いよなぁ。生徒に嫌われるぞ?」

「お前の為だってのに。愛を理解しろよ」

愛かよ。

「学校に取材に来るんなら、今の取材なんか無駄なのに」

「いや、案外と興味深かったのかもな」

前田先生はにやっと笑って

「あの記者、じっくり絵を見てたからな。絵を見た上でインタビューしたいって人なんだろうよ」

そんな大した賞じゃないのに。

仕事熱心なんだなぁ…。

「それにお前は、あの人の会社が推した絵を描いたんだぜ?気合いも入るだろうし」

前田先生は言葉を止めて、俺の絵を見た。

「この絵の作者だぜ?一筋縄じゃいかないって思うだろうよ」

「そうかな…」

「深いもんな…この絵」

前田先生は顎に手を置き、じっくりと絵に見入っている。

「きっかけをくれた彼女に感謝しろよ?」

「それは…はい。もちろん」

俺の言葉に、一瞬驚いた表情をしたものの

「若いなー。羨ましき事だな」

と苦笑いを浮かべた。

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