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12cm~越えられない距離~

第30章 12cmの距離

固い表情で質問するアキに、唇を尖らせると

「コンクール用だから、今日みたいに貼り出されたら、誰が見るか分からないだろ?」

「うん」

「例えば、さっきみたいに…取材とかで、絵の横に立って写真を撮られるかも」

ま、取材なんて日常にはあまりないことだけどな。

「…うん」

アキも、俺が何を言いたいのか、薄々感じ取っているみたいだ。

「誰が見てもアキだって分かる絵と、並んで写るのは…照れる」

「うん…」

小さい声で頷いた。

顔を見ると、アキも照れ笑いを浮かべていて…

「アキ、あのさ」

「何?」

「……」

わざと小声で話しかけると、アキは小首を傾げた。

「聞こえない。何?」

「ちょっと耳かして」

「何なのよ」

アキが前屈みになって、耳を俺に向けた。

俺は手を口に添えて、内緒話をするようにアキに近付く。

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