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12cm~越えられない距離~

第30章 12cmの距離

アキの耳に指が触れた。

くすぐったそうに目を細める表情が可愛くて

「好きだよ」

アキの耳元で囁くと、そのまま手を伸ばし、アキの両頬を包んで…

「んっ!!」

初めて他人の唇の柔らかさを知った。

唇を離すと、目を見開いて驚いてるアキがいた。

アキは、身を屈めたまま硬直している。

そんな姿に、思わずくすっと笑いがこぼれた。

「行こう。俺、腹へったなー」

俺が歩き出すと、アキは慌てたように追いかけてきて

「え?あ、う…わ」

言葉にならないのか、何やら呻いている。

「どうした?」

あえて冷静を取り繕って聞くと

「今の…」

「ん?」

唇を押さえて戸惑ってるアキに、心がざわついた。

「嫌だった?」

そういえば、アキの気持ちを聞く前にしちゃったんだよな。

何となく、アキも俺を…なんて思ってたけど。

ちゃんと聞いた訳じゃない。

「ううん!!」

アキは首を振って否定した。

良かった。

ホッとすると同時に、アキの気持ちが気になり始めた。

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