テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第6章 後ろから…

くすくす笑うアキからボールを渡された。

さっき教えてもらった構えを思い出して、思いきってシュートを打つ。

リングの縁に当たって…カン、と高い音を立てたボールは、角度を変えて外側へ落ちていった。

「うわ~、惜しい!!」

ノブちゃんの声が聞こえた。

「惜しかったね」

隣から聞こえた声が明るくて、救われた様な、意外な気分になる。

「悪い!!もうちょっとだったんだけど…」

「ん。始めより上手いフォームだったよ。…それに」

と、声を潜めて

「ノーミスの景品。あれ貰ってくのはちょっときびしくない?」

え?景品?…って何だっけ!?

受付を見て景品を確認すると、思わず

「確かに」

と呟いてしまった。

何故なら、そこにあったのは、この遊園地のマスコットキャラクターの抱き枕だったから。

「全部決まったらヤバイかもって思ってたから、良かった。これでプレッシャーもなくなったし」

アキは笑ってシュートエリアに向かった。

俺のこと慰めつつ、負担を取り除く言葉までかけていった。

女の子に使う言葉じゃないかもしれないけど…やっぱり格好いいな。

アキの手から放たれたボールは、ネットを揺らしてキレイに落ちていった。

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