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12cm~越えられない距離~

第1章 出会い

トントントン。

静かな空間にノックの音が響く。

「はいはい、どうぞ」

少し間延びした声音。

「失礼します」

声をかけて、ドアを開いた。

「美術部員の中谷です。荷物を取りに来ました」

怪訝そうに俺を見ていた先生が、あぁ、と呟き

「前田先生から聞いてますよ。ここを部室代わりに使ってるんだってね」

「はい。…邪魔ですか?」

「いや、大丈夫じゃないかな?…どうしても避けてもらわなきゃならないときは頼むから」

「はい、分かりました」

俺はにっこり微笑むと、自分の荷物が置いてある場所に向かった。

何だ。結構話せる人みたいだ。これなら大丈夫かもな。

俺が荷物に手をかけた時

「中谷…中谷繚くん?」

「繚平です」

荷物を探りながら訂正する…でも何で名前知ってるんだ?

「あ、ごめん。前田先生が繚って言ってたから…繚平くん、か。そっか。君が、ね」

何となく、意味深な言い方だな…。ま、理由は分からなくないけど。

「何て言ってました?美術部の問題児とか?」

冗談混じりに明るく言ってみたものの

「いや!?そこまでは…」

その否定の仕方。あながち外れてもないみたいだな。

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