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12cm~越えられない距離~

第9章 絵を描く、という事

部長の発言に、思わず抗議の声を上げた。

もちろんそんな声を上げたのは俺だけで…

部長が俺をジロッと睨んだ。

「去年は自由参加という形をとりました。結果、部員の8割が出品するという状態でした」

俺は出さなかったし、3年の受験控えてる先輩なんかは期日に間に合わなかったりしたんだよな。

「でも、部員全員で何か1つのことに向き合うのも、部活動として大切だと思うんです」

部長の熱弁に、部員のほとんどが賛同の表情を浮かべている。

「先生にも相談したところ、私の意見に同意してくれました」

…成程ね。

前田先生は自主性重視だったからな。

『絵を描く奴には二種類いると思う。
描いたことで自己表現して満足する人。
描いた絵を他人に見せて評価してもらって満足する人。
どっちがいいなんて言わないが…
コンクールなんかは、出したい奴が出すべきだと思う』

正当な評価を受けたくて一心不乱に描いた絵。

それと同じ土俵に立てるだけの絵を描かなければ、出すべきじゃないと言ってた。

同じ美術教師でも、考え方の違いで指導法も変わるんだな…。

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