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12cm~越えられない距離~

第10章 『エース』の悩み

「お邪魔します…」

俺に続いて部屋に入ったアキは、部屋の中をぐるりと見渡し

「意外に片付いてるんだね」

「何だよ、意外って」

「ん?作業部屋ってもっと雑然としてるのかと思ってた」

俺の部屋じゃなく、彫刻するときに使う部屋に連れてきた。

「あんまり散らかってると、一応刃物だから危ないしな」

「あぁ…。そうだね」

どうぞ、と椅子に座らせて、棚からスケッチブックを取り出すと

「んじゃ、いい?」

「…いい、けど…何するの?」

「手のひら上にして、広げて見せて」

おずおずと両手を俺の前に差し出した。

「うん、じゃあそのまま」

俺はアキの前に座り込むと、スケッチを始めた。

「アキの手、指長いね」

「え?そう?」

「自分で思わない?」

「あんまり…」

俺はアキの中指の先端から付け根までの長さを、俺の親指と人差し指で測って、そのまま手のひらに置いた。

「ほら。手首まで来る」

「あ、本当だ」

感心したように自分の手を見ている。

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