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不器用なくちびる

第11章 未来

帰国が近付き、椎名のことを思い出す
ようになってから…私の心と身体には
変化が起きていた。

あの頃、椎名に触られた事実が、
自分でもコントロールできないくらい
蘇って…寝る前には布団の中で
苦しくなってしまうほどだった。

私の好きな人は確かに吉井くんだった。
でも、身体は椎名に触られることを
待っていたんじゃないかとさえ思える。

椎名があの時どういうつもりだったのか
は私にはわからないけど…
私の心には確実に椎名に激しく愛された
記憶が傷痕を残している。

その記憶は吉井くんとのキスより
鮮明で…

好きな人とのキスよりも、
好きでもない人からされた陵辱とも
言える行為が忘れられないなんて。

みんなはどうやって恋をしているの?
好きな人と、身体を求める人。
それが一緒じゃないなんて…
私はおかしいの?

一人、声を上げて泣いた。

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