溺れる愛
第7章 勉強
頭の上に乗った物を手に移すと
それは黒いパーカーだった。
那津も同じ物を着ている。
(なんか…ペアルックみたいで嫌なんですけど…)
渋々パーカーに袖を通すと、ほんのり自分とは違う
柔軟剤の良い香りがした。
『ぶかぶか……』
袖からはもちろん普通の状態では手が出ない。
丈も長く、スカートが大方隠れる程だった。
手を広げて改めて那津の大きさに感心していると
「良かったじゃん。豚でも着れて。裂けたらどうしようってヒヤヒヤした」
少し先を歩く那津が意地悪な微笑で嫌味をとばしてくる。
『なっ、裂けるわけないでしょ!』
(やっぱり…男の人って大きいんだな…。男物の服を着たのなんて小さいとき以来だから、なんかちょっと新鮮…)
借りたパーカーのおかげで、少し冷える夜道も暖かく歩けたし補導もされずに済んだのだった。