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溺れる愛

第7章 勉強




当たり前の様に那津の家に帰宅して
コンビニで買ったサンドイッチを頬張りながら
今は英語の教科書を読んでいた。


那津もすこし離れた所でおにぎりを食べながら
ノートパソコンのキーを片手で素早く叩いている。



『それ…また仕事?』


「…ん」



恐らく官能小説を執筆しているであろう那津は、
パソコンを開いている時はとても真剣で
画面を食い入るように見つめている。



(タイピング…凄いなぁ…)



なるべく邪魔にならない様に、芽依も静かに教科書と睨めっこしていると
ポケットから振動を感じた。


(こんな時間に誰だろ…?)


てっきりメールかと思いきや、画面は着信を知らせていて


【川上俊哉】


と表示されていた。


(せ!先輩!うそ!どうしよう…!)


途端に暴れ出す自分の心臓をうるさく感じながらも
隣で真剣に仕事をしている那津の事も気がかりで
なかなか通話ボタンを押せないで居ると


「電話?」


那津がパソコンから顔を上げてこちらを見ている。



『うん…あ、外行くから…』


「いいよ、出れば?」



(先輩からの電話なのに…いいのかな…)



少しだけ躊躇するも、かけ直す勇気もないので
そっと通話ボタンをタップした。



『はい…もしもし…』


自然に那津に背を向けて小声になってしまう。



「あ、ごめんね、いつもこんな時間に…。
もしかして寝てた?」



『い、いえ…起きてました…!』



(はぁ~…先輩の声が疲れた身体に染みるー…)



目尻をくしゃっと垂れ下げて、うっとりと受話器から聞こえる声に耳を澄ませた。



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