溺れる愛
第9章 花火
「どうかした?」
芽依の異変に、心配そうな表情で尋ねられ
慌てて首を横に振った。
『いえ…その…何でしたっけ…』
(あの時は…那津にあんな事されてて…集中出来なかったから…)
思わず俯く芽依に、やはり俊哉はどこまでも優しく
「最終日は、一緒に過ごそうって約束…覚えてない?」
『あ…そう言えば…そうでしたね』
(そんな約束してたのに、忘れちゃうなんて…)
心の中で自分を叱りながらも、今日これからを思うと沈んだ気持ちが軽くなる。
「じゃあとりあえず朝ご飯食べて、芽依は着替えようか?」
そこで、自分の格好を思い出して少し恥ずかしくなってしまった。
『はい…そうします』
照れる芽依を穏やかな表情で見つめる
普段とはまた違った装いの俊哉に
胸の高鳴りが治まることはなかった。