溺れる愛
第9章 花火
(嘘…やだ、どうしよう…恥ずかしい…)
思わず照れて俯くと、自然に繋がれた手が目に入った。
(先輩と手を繋ぐの…これで二回目だな…)
自分ばかりが褒められていて、少しでも本音を言いたい芽依は
勇気を振り絞って、小さな声でこう告げた。
『先輩も…格好いいです…すごく…』
その言葉に、俊哉は本当に嬉しそうに笑って
「ありがとう」
眩しい笑顔を向けてくれる。
「じゃあ行こうか」
『…はいっ』
しっかりと繋がれた手に、焦れったいような熱さを感じながら
隣を歩ける嬉しさを噛み締めて歩き出した。
それからしばらくして田舎の中でも少しだけ活気ある街並みに出て
ウインドーショッピングをしたり
喫茶店でまったりしたりと
日が暮れる頃までデートを楽しんだ。
もちろん手は繋がれたまま。
この関係って一体…?
と疑問に思うが、口にする勇気もなく
ただ俊哉の隣に居られる幸せだけを考える事に集中した。