
溺れる愛
第10章 距離
お盆の朝の電車はすいていて、那津と隣同士に座りながらお互い無言で窓の外を見つめていた。
(何も…話すことが思い浮かばない…)
強いて言うなら俊哉との事だが、今ここでする話ではなさそうだ。
すると、ふわりと肩に何かが触れて、そのままズシッと重みがのし掛かる。
『ちょ…何…』
見ると、那津が芽依の肩を枕に目を閉じている。
「…わり…ちょっと寝かせて…」
そのまま本当に那津は眠ってしまった。
(重い……)
すやすやと寝息を立てる那津に目をやると
普段は見られないような穏やかであどけない寝顔をしている。
(まつげ長いな…私より長い…?)
容姿端麗な那津は、どの角度から見ても綺麗で
少し妬けてしまう程だ。
(てゆうか…目のクマが凄い……。
本当は朝が弱いんじゃなくて寝不足なの…?)
そんな事を考えながら、安心した表情で眠る那津を眺めてしばらくそっとしておいた。
