
溺れる愛
第10章 距離
「私は波瑠(はる)。姉弟揃って季節の名前なの。漢字は違うけどね」
『波瑠さん…素敵なお名前ですね!』
心から言った言葉に、波瑠は目に涙を浮かべる勢いで
「決めた!なっちゃんの彼女じゃなくても、芽依ちゃんはもう私の妹よ!」
とまた抱きついてくる。
『嬉しいです!私一人っ子なんで、お姉さんってすごく憧れてて』
「私も!こんなに可愛い妹がずっと欲しかったの!」
(どうしよう!那津と違ってすっごく良い人!容姿を取り除いたら姉弟だなんて信じられない!)
キャーキャーとハシャぐ芽依と波瑠の元に
静かだけどよく通る声が掛かった。
「こら、波瑠。芽依ちゃんだって長旅で疲れてるだろう。お茶くらい淹れてあげな」
その声に振り返ると、そこには爽やかで筋肉質な
これまた美形男子が立っていた。
「あ!そうだった!ごめんね、芽依ちゃん。
つい興奮しちゃった」
ペロッと舌を出して笑う波瑠が可愛くて
芽依の心はキュンキュンなりっぱなしだった。
「紹介するね。こちら、和人(かずひと)って言って、私の旦那様」
「初めまして。今日から宜しくね」
人の良さそうな笑顔で挨拶されて
芽依も慌てて頭を下げた。
『は、はじめまして!新井芽依です!
宜しくお願いします!』
その様子に波瑠はまたキャーと声をあげて
「本当に可愛いでしょう?今日から私の妹よ。和人も優しくしてあげてね」
寄り添って歩く美男美女の夫婦は本当に幸せそうでお似合いだった。
