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溺れる愛

第12章 共犯





しばらくそのまま静かに泣いていると、窓を開ける音がして
那津はどうやらベランダに居たらしく部屋の中へと戻ってきた。



(…顔…見たくない……)



寝ているふりをしてやり過ごそうとしたものの
那津がそっと芽依のうつ伏せになった頭に触れて



「…外まで聞こえてんぞ」


『………』


声を殺していたはずだけど、嗚咽が静かな深夜には響いてしまっていた。


那津は芽依の髪の毛を指に絡めながら優しく梳いて
ギシッとベッドが軋むと、芽依を覆い尽くすようにして頭を抱いた。



『…っ…何…』


「…泣くなよ。」



(誰のせいで……ううん…私も悪い…)



言い返そうとして、その口を噤んだ。


那津の小さな声が耳を擽る。
それは、少しだけ憂いを帯びた様な声で
心地良く胸に響いてくる。


「お前はただ俺に脅されて仕方なくヤった。
それだけだ。」


『…そんな都合のいいように考えられない』


「無理でもやれ。それが俺の命令」


『……出来ないよ…』



那津は少しだけ芽依を抱きしめる力を強めて
はぁ…と小さく息をついた。



「いいか?俺は身体だけ貰えればそれでいい。
心は要らない。だから、お前はそのまま彼氏に心を置いとけ」



その言葉がイマイチ理解出来なくて、うつ伏せていた顔を横にズラして、間近にある那津の顔を見つめた。


那津の表情は、やはり冷たい。



「彼氏の事を好きで居続けろって言ってんの。
俺に流されるのは身体だけでいい。
だから別れようなんて思うなよ?」



でも、髪に触れる手と声は優しくて
余計に混乱が膨らんだ。



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