
溺れる愛
第12章 共犯
『…言ってること矛盾しすぎ…。
さっきは浮気だって言ってたじゃん…』
「あぁ…あれはお前の反応が楽しくて」
『…悪趣味…』
また少しの沈黙が流れた後、那津がポツリと切り出した。
「これは浮気じゃねぇよ。ただの取引だ。
お前の秘密を黙ってやる代わりに俺はお前を抱いてるだけ」
『……脅しの間違いでしょ』
「…俺はお前と彼氏の関係を壊す気は無い。
むしろ応援してるぐらい。」
その言葉に少しムッとなって
『じゃあどうしてこんな事するの…!』
泣きはらした赤い目で那津を睨む。
「それはまだ内緒。」
『…は?』
思いがけない言葉に気の抜けた声が洩れた。
(内緒って…何考えてるの…?)
「俺から壊す気はねぇから。
でもお前が逃げたらその時は、お前の後の人生ごとぶっ潰す」
その声音は冗談を言っている様では無くて、
凄く低くて冷たい声にゾクッと悪寒が走る。
「黙って言うこと聞いてたら、そのうち解放してやるって何回も言ってるだろ」
『……そのうちって…いつ』
「さぁな」
これ以上は、もうどちらも口を開く事は無くて
その日芽依がベッドで、那津がソファで一夜を過ごした。
