
溺れる愛
第12章 共犯
呼び出し音はすぐに止んで
受話器からはあの優しい少し低い声が聞こえてくる。
「もしもし、芽依?」
その声を聞いた瞬間、電話をかけた事を激しく後悔した。
(やば……泣いちゃう…)
『…もしもし』
自分からかけておきながら、嗚咽が喉に詰まって話題を振ることさえ出来ない。
「びっくりした。どうした?何かあった?」
旅先で友達と楽しく過ごしているはずの芽依が
不意に電話をかけてきた事に、俊哉は心配してくれている。
それが余計に芽依の心を締め付けた。
『…いいえ…先輩、何してるかなって…』
「あぁ俺?俺は相変わらず部活ばっかりだよ。
今ちょうど休憩中だったんだ」
『…そうなんですか…』
零れそうになる涙を必死に堪えて
平静を装いながら話をする。
「周り、すごく賑やかだね。
確か海に居るんだよね?
海かーいいなぁ。来年は一緒に行こうな?」
───来年という言葉に、堪えきれずに涙がこぼれた。
(私と…こんな私と…ずっと一緒にいるって
思ってくれてる…)
