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溺れる愛

第3章 喪失





通学路より少し逸れた繁華街に、お洒落なカフェがオープンし、そこには学校帰りの学生や
仕事終わりの女性が大勢押し寄せていた。



そこで皆で学校の事や恋の話で盛り上がる。

何気ない女子同士の会話が、芽依の心を解していき、昨日の嫌な緊張感は帰る頃にはすっかり無くなっていた。



「芽依はあっちの方だよね?私たちこっちなんだけど、一人で大丈夫?」


桃花が心配そうに顔を覗き込んでくる。



楽しい時間はあっという間で、気がつけば外はもう日が傾き出した頃だった。



『大丈夫だよ。ここから近いし。みんなも気をつけて帰ってね』


「そっか。芽依も気をつけてね!また明日!」



お互い手を振り合って、別々の帰路につく。



(今日はお父さんも出張で、お母さんも夜勤だっけ…。)


芽依の父は商社に勤めており、出張などで家を空ける事が多い。
母も看護師で、勤務時間はバラバラだった。


芽依は一人っ子で、いつも家に一人で居る事が多かった。

だからと言って家族関係が冷めている事はなく、比較的仲の良い家族だった。



(寂しくないって言ったら嘘になるけど…)



良い子にしていないと、大好きな両親が困ってしまう。


そう思うと、自然と我が儘を言えない性格になっていった。



(今日のご飯…何かな。)


唯一の楽しみは母の手料理。



教室をでる時より少し重い足取りで家路を急いだ。



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