溺れる愛
第3章 喪失
(え…?)
聞き覚えのある声に、顔だけを動かして振り向くと
そこにはあの冷徹な目つきで男達を睨む那津が居た。
「なんだよ。男いんのかよ。」
「めんどくせー。行こうぜ」
男達はそそくさとその場を去っていった。
それと同時に、那津も芽依の身体をさっと離して芽依に向き直った。
「何やってんだよ。とろい女」
『な…にって、那津くんこそ…』
よく見れば那津はTシャツに黒いパーカーにGパン姿。
眼鏡もつけていない。
(やっぱりかっこいい)
悔しいけど、そう思ってしまう。
こんなラフな格好をしていても、服が引き立つ程に那津はかっこよかった。
「何。俺に見とれてる?」
『なっー!違う!』
(訂正!!こんな自信家の自惚れ野郎なんてかっこよくない!!)
那津はコンビニ袋をぶら下げながら、はぁと短く溜め息をついた。
「あんたでも、あーゆーことあるんだな」
(あんたでもってどういう意味よ!)