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溺れる愛

第14章 錯乱





「だけど…っ!私はもう俊哉の事が忘れられなくて彼氏とは別れたって言ったじゃん!!」



女が泣きながら叫ぶ。



「俺はいくら言われても無理だって言っただろ?」


「じゃあ…急にもう私とは会わないって言ったのは…その子の事が好きだから…?」


その時、肩を抱いていた俊哉の手に僅かに力がこもって



「そうだよ。俺はこの子を本気で好きだと思ってる。悲しませる事なんてしたくない」




真っ直ぐに女を見据えて言った俊哉の表情は真剣で
その表情から全てが伝わってくる。

嬉しい事を言われているはずなのに
芽依の心はどんどん痛んでいく一方だった。



(そんなに…想ってもらえてたなんて…)


涙で滲む視界で、何もかもがぼやけて見える。
何の涙かは…解らない。



「嘘…ねぇ嘘だよね?その子もただの暇つぶしなんでしょ…?」


わなわなしながら女はすがりつくように話す。
だけど俊哉はキッパリとそれを突き放した。



「それはお前。
この子は…俺の一生をかけてでも大事にしたいって思ってる。」



『…先輩…っ…』



堪えきれずに頬を涙が伝う。
それは芽依に限らず目の前にいる女も一緒だ。



「だから…頼むからもう俺に関わらないでくれるか?
俺らの邪魔をするな」



最後の一言は、まるで釘を刺す様な言い方だった。
女はそれにがっくりと肩を落として泣き崩れ
だけどすぐに顔を上げて俊哉を睨み

パンッと平手打ちをして


「最低!!!」


と叫んで走って去っていった。



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