
溺れる愛
第14章 錯乱
「笑えるけど…何人も好き勝手に相手してきた俺が…
たかがちょっとぶつかったぐらいで、すげぇ動揺して…なんとか普通に見せるのに必死だった」
『…っ……』
(あの時の…体育館の前で、そんな事を思ってくれてただなんて…)
「それからすぐ…なんでか解らないけど泣きながら走り去って行った芽依を見て、心が押し潰されそうな感じがして…
その時はっきり、俺が守ってやりたいって思った」
真っ直ぐに見つめてくる俊哉の瞳から目を離すことが出来ない。
「やっと…本気で好きな子が出来たって思ったら…
今度は嫌われるのが怖くなって
散々やってきた事がバレるのが怖くて…
こんな俺を知ったら…多分幻滅したよな…」
また切なそうに笑う俊哉に、芽依は必死に首を横に振って答えた。
『いいえ…そんなの、しません…っ』
(だって…そんな過去があったとしても…
私の知ってる先輩は、すごく素敵な人だから…)
その芽依の様子を見て、安心した様に表情を崩した彼は
「…よかった…嫌われたかと思った…」
安堵の息を吐いた彼に、少し薄暗くなった所に街灯が射して
その目が潤んでいるように見える。
「俺…芽依のことは絶対大事にする。
悲しませる様な事はしたくない。
こんな気持ち初めてで…必死にかっこつけてて…
なんかカッコ悪いな」
『そんな事ない!!』
居たたまれなくなった芽依は、つい大声をあげてしまった事を後悔したが
罪の意識からそれを止められない。
