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溺れる愛

第14章 錯乱





『それなら一つ、条件がある』


真剣な面もちで切り出す芽依に、那津は愉しそうに口角を上げて


「なんだよ?」


余裕の表情だ。



(言うなら…今しかない…)


ギュッと手を握りしめて、意を決して話し出す。



『黙っててあげる代わりに…もう私にあぁいう事はしないで…』



(よしっ言った…!)


心の中でガッツポーズを決めるも
那津は飄々とした表情で切り返してくる。


「あぁいう事って?」


その意地悪な表情にムッとしながらも
少しだけ照れて顔を俯けながら



『だから…その…っ、え……ちな事…』


自分の口から“エッチ”という単語を吐くのがこれでもかというくらいに恥ずかしい。



「エッチな事って例えば?」


すると、横に座っている那津が少しこちらへ距離を詰めてくる気配を感じて
すぐさま顔をあげてガードの体勢に入る。



『たっ、例えばって…』


(そんなのどう説明したらいいかわかんないよ!)


答えに詰まっていると、ゆっくりだった那津の動きが
一気に速くなって、あっという間に顎を掴まれ
鼻先がぶつかる程に顔を近づけられる。



『───っ』


「なぁ…教えて。
これもエッチな事に入んの?」


間近で囁かれるその艶のある声に
心臓が一気に暴れ出す。


(かっ…顔近い…!!!)


条件反射のように顔が熱くなって
真っ赤になっていることは自分でも解るほど。



『は…入る…!!』


ギュッと目を瞑って、羞恥に耐えながら答えると
那津はクスッと笑って一言


「じゃあ…その条件は聞けないな」


そのままあっさりと、奪うように唇を押し付けられた。



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