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溺れる愛

第14章 錯乱




(う…嘘…っ、また…キス…)


唇を割られ、そこから那津の熱い舌が入ってくる。
上顎や歯茎をなぞられ、ぞくりと背筋に快感が走った。


『ん…ゃ…っ…!』


(流されちゃ…ダメ…っ!!)


ドンっと那津を突き放すと、彼はまたそれすらも面白がっている様子で
それが少し頭に来る。


『だから…っ!こういうことはしないで!!』


少し声を荒げて言うと、何だか一気に悔しさが込み上げてきた。


自分にはこんな酷い扱いで
だけどあの女の子にはあんなにも優しく接していて
その差に腹が立ってしまう。

ヤキモチを妬いてしまう…。



『どうしてこんな…だってあの子がいるんでしょ?
私にだって先輩がいるのに…意味わかんない』


「…意味…教えてやろうか?」


グッと低くなった声音に、少しだけ肩がビクつく。


那津はかけていた眼鏡を外して、静かにテーブルの上に置いた。


これは、那津がいつも芽依に卑猥な事をするときの合図のようなもの。



「俺がしたいから」



その言葉は、静かな部屋にとてもよく響いて
芽依はただ目を丸くした。


『は…?したいって……』


「俺は芽依としたい。それが理由」


『待ってよ…あの子がいるじゃん…』


「…あいつは芽依じゃない」



(本当に待って…意味わかんない…
私としたいって、何なのそれ…)



「もう…いい?」


那津のその声に、妖しい瞳に
全身が甘く疼き出すのがわかる。

何度も那津に植え付けられたあの快感を
身体は覚えていて、那津を求めてしまっている。


(流されちゃ………)


ダメなのに、那津の顔がまた近づいてきて
気がつけば目を閉じてそれを受け入れてしまっていて…


────俺は芽依としたい────


こんな嘘か本当かも解らない言葉に翻弄されて
堅く誓った決心も軽々しく粉砕される。



自分は…何に期待したんだろうか。



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