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溺れる愛

第15章 確信




いよいよ明日に旅行を控えた夜。


もういつも通りになってしまった那津との逢瀬。



情事に耽ったあと、那津の腕の中で少し眠ることも
最近では当たり前になってきている。



今日も、彼の腕の中で目を閉じて穏やかな寝息を立てる寝顔を見ながら
その整った容姿に釘付けになる。



(那津…どうして私を抱くの?
それとも…私だけじゃなくて、あの子も抱いてるの?)


長いまつげに少しだけ指先で触れてみると
彼は少し身じろぎながら、そのまま眠っている。


ギュッと抱きしめられて、まるで離さないとでも言うようにキツく。


確実に、那津は以前に比べて優しい。
だけど肝心な所で壁を作る。

どんなに手を伸ばしても届かない。



(…ダメ…考えちゃダメ…。これは…
ただ先輩にバラされたら困るから…だから従ってるだけなんだから……)


ギュッと手を握って胸に押し当てる。


そこでまた改めて疑問が湧いた。



(先輩にバラされたら…本当に困るの…?)


俊哉との関係が終わることが嫌だったのは事実だ。
だけどそれは最初だけで

今は…?

本当は、那津との関係が終わってしまう事の方が
自分は恐れているんじゃないかと思ってしまう。



(………ダメだよ芽依……)


この関係には、未来は無い。

那津は自分を愛している訳では無い。
本命が他にいる。


もう考えないように気持ちに蓋をして
明日からの俊哉との旅行を思い浮かべる事に集中しながら
那津が起きるまでの時間
ずっと寝顔を見つめていた。



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