溺れる愛
第3章 喪失
「その辺適当に座って」
通されたリビングにはお洒落なガラステーブルに
上質な革製のソファ
カウンターキッチンの上にはミルとトースター。
(…なんか…もしかして、もしかしなくても
すごくお金持ち…?)
言われたとおり、ソファに腰かけると
低反発と高反発が入り混じった様な
なんとも言えない沈み具合に思わずうっとりと溜め息がもれた。
(こんなソファ…座った事ないよ)
窓際には丁寧に扱われているのがひしひしと伝わってくる観葉植物。
(このテレビなんて…何インチなの?
大きすぎて目がチカチカしそう)
でも、不思議なことに生活感は伝わって来ない。
「あんた、珈琲飲める?」
そこに、グラスを二つ持った那津が立っていて
緊張からまた身体がビクビクしてしまう。
『飲めます…』
無表情で見下ろされる形に、思わず敬語になってしまう。
「砂糖とミルク、適当に使って」
カタンとテーブルの上にコースターを敷き、その上にブラックのアイスコーヒーが入ったグラス。
その横にガムシロップとミルクが入ったミニポット。
(全部高そうな食器…触るの緊張しちゃうよ…)
『ありがとう…』
「暑い?クーラーする?」
ドカッと当然のように隣に腰を下ろされて、芽依には暑さなんて気にする程の余裕は無かった。
『私は…那津くんが暑いなら…』
(うまく喋れないよ…ていうかなんでこんな近いの?こんなに大きいソファなんだから、もっと距離あけて座れるじゃん…)
「じゃあ、暑くなる事する?」